人間として人生を営む以上、不安や悩みを完全になくすことは難しいものです。では、どのように対処すればよいのでしょうか。それは、不安や悩みとうまく付き合っていくことが、人生を幸せにする一つの方法であるということです。このことを教えてくれるのが、枡野俊明さんの著作です。その中には、多くのヒントが記されています。
『心配事の9割は起こらない』という本のタイトルを見ただけで、思わず手に取りたくなります。枡野さんは、禅の教えを基本にさまざまなことを説かれています。世の中には、自分の力ではどうにもならないことがある。だからこそ、あるがままを受け入れることが大切です。心を向けるべきは、「どうにもならないこと」ではなく、「どうにかなること」。『放っておく力』にも、同様の考え方が数多く記されています。
「半分わかってもらえれば上等」「他人を変えるのは至難の業」「おせっかいと気遣いは違う」など、簡潔で読みやすい構成のため、内容がすんなりと入ってきます。中でも特に印象的だったのは、「たとえ家族であっても、別の人間である」という考え方です。互いの生き方を尊重し、見守る姿勢こそが重要だというのです。家族であるがゆえに、つい感情的になって説得しようとしたり、抑えきれずに衝突してしまったりすることはよくあります。しかし、「家族といえども一個人であり、自分の思うようには動かないものだ」と割り切ることで、心がすっきりするものです。
全体を通して、うまく悩みを克服しながら生きていく方法として、「今に集中する」「今できることをやる」「将来の不安を想像しても仕方がない」「過去の栄光にとらわれない」「一人の時間を楽しむ」といった、自然な生き方が提案されています。若いころは、なかなかこのような態度をとることが難しかったように思います。しかし、年を重ねるにつれて、手放すこと、そっとしておくこと、そして「ほどよさ」を知ることが、次第にできるようになってきた気がします。不安を感じたときには、一読をおすすめします。