「人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。僕は逆に積み減らすべきだと思う。~捨てれば捨てるほど、いのちは分厚く純粋に膨らんでくる。」いきなり著作の冒頭からこんな書き出しで始まる岡本太郎氏の著書『自分の中に毒を持て』
「生きることは寂しい。面白いじゃないか。~寂しいということは生きがいを見つけるすばらしいきっかけであり、エネルギーだと思えば勇気が湧いてくるだろう」著書エッセー集『自分の運命に楯を突け』
岡本太郎氏の著作はこんな下りが多く、読んだ時点でこちらの瞳孔が開き、脳の血流が倍になり、食い入るように読み出してしまいます。書き手が読み手に問いかけてくる言葉は常に挑戦とか戦いとか対決とか、ゆったりと本を読んでいる気分にさせてはくれないものばかりです。不安定、どん底、曲線、下手くそ、不自然、孤独、迷い等々人間として相対して触れたくないものばかりに敢えて挑んでそれをどうにかしていくのが人生の醍醐味との発想で。そしてそれが成功するか失敗するかは関係なく、そこに挑んでいく行動や気持ちが最も大事なんだと教えてくれます。
小田急線の向ヶ丘遊園駅下車して少し駅から離れていますが、岡本太郎美術館があります。岡本太郎氏の巨大な作品が多数展示されていて(有名な『森の掟』も展示)、これも観ただけで圧倒されるものばかりで、著書と同じくこちらに何かを挑んでくる感じがします。彼の言葉で私が好きなのは、古代縄文土器を見て形容した「いやったらしい美しさ」。こんな表現をする人はほかに居ません(笑)。
しかしどの著書を読んでも急に元気が湧いてきます。ドキドキしてきて、このままではいけないとか明日はなんとかしてみようとか自然と眠気がなくなります。そんな強烈なメッセージが岡本太郎氏の作品には込められています。
最後に著作『今日の芸術』で掲げられている芸術の3つの条件を紹介しておきます。
芸術は綺麗であってはいけない。うまくあってはいけない。心地よくあってはいけない。これが根本原則だ。岡本太郎氏らしいの一言です。もうこんなこと言う人はいないですね。なんか自分で壁にぶちあたって元気が無くなった時はぜひ岡本太郎氏の著書、作品に触れてみてください。精神科医にカウンセリングを受けるより効果絶大です!昨今は生成AIを効果的に利用してやたら綺麗に効率よくやるという風潮ばかりが持てはやされています。岡本氏が生きていて今の時代を見たら何というでしょうかね。聞いてみたいものです。